新年を迎えて
(平成 23年1月4日 市長庁内放送より)
ご来庁の市民の皆さま、そして職員の皆さん、新年明けましておめでとうございます。
市長の渡部 尚でございます。
年末年始は、寒波の影響により山陰地方が記録的な大雪に見舞われるなど、北日本や日本海沿いを中心として荒れ模様となるところが多かったですが、幸いにも当市は、年末も三が日も比較的穏やかで、温かな天候に恵まれました。市民の皆さま、また職員の皆さんも、平成23年の新春を健やかにお迎えのことと心からお慶び申し上げます。旧年中は、市政推進に深いご理解と温かいご協力をいただき、誠にありがとうございました。お陰さまで、私が市長に就任してから4回目となる新年を、こうして無事に迎える事ができたところでございます。
早いもので、平成19年5月に市長に就任してから、3年7ヶ月が経ちました。この間、私はマニフェストの実現に向けて、一日一日を大切にしながらも、全力疾走で駆け抜けるような思いで日々市政に取組んでまいりました。特に、国の三位一体改革の影響を大きくうけ、深刻な財政危機に喘いでいた東村山市の自治を市民の皆さまと共に守り育てるため、まずは「行政改革による財政の立て直し」と「市民参加と市民協働による地域活性化と新たな自治の仕組みづくり」に、不退転の決意で取り組んでまいりました。
あわせて、学校耐震化や乳幼児医療助成制度における所得制限の撤廃など、確かな未来を切り拓くための「安全と安心のまちづくり」や、東村山駅西口再開発事業や久米川駅北口整備事業などの「活力と魅力あるまちづくり」を、全力で推進してまいりました。まだまだ道半ばではございますが、着実に成果が現れつつあります。
特に、危機的状態にあった財政状況につきましては、実質単年度収支において2年連続黒字を達成いたしました。そして、一時4億円台にまで落ち込んだ財政調整基金は、21億円台まで回復させることができました。これは、この3年間における基金の伸び率としては、多摩26市中1番の数値であります。さらに、財政構造の弾力性の指標である経常収支比率についても、昨年度決算で91.1%と、依然として高めではあるものの、3年間の改善度では-2.9%と、こちらも多摩26市中で1番の数値であります。
また、小中学校の校舎と体育館の耐震化につきましても、私が市長に就任した当時の耐震化率44.2%から、今年度は71.6%になるなど、子どもたちの安全を守るため大きく進展しております。「活力と魅力あるまちづくり」につきましても、前市政より引き継いだ東村山駅西口を一昨年9月に、久米川駅北口駅前広場を昨年4月に、それぞれオープンさせることができました。さらに、昨年11月には西武新宿線東村山駅周辺の連続立体交差化事業の都市計画素案がまとまり、市民説明会を開催するなど、こちらも大幅に進捗が図られております。
この間、ご理解とご協力を頂きました市民の皆さま、職員の皆さんに、改めて感謝申し上げます。任期満了まで残された期間は、あとわずか4ヵ月ではありますが、今後も市民の皆さまの目に見える具体的な成果を出すことのできるよう、マニフェストの実現に向けて更に邁進してまいりたいと考えております。
昨年は、名古屋市や鹿児島県阿久根市における、多くの市民を巻き込んでの「市長VS議会」の全面対決や、「大阪都構想」をめぐる「知事VS市長」の対立などが全国的に注目を集め、地方自治の根幹である二元代表制や、府県行政と市町村行政の役割分担が問われた一年でありました。また昨年は、政治哲学者でハーバード大学教授であるマイケル・サンデルの「白熱授業」が日本でも放送され、大きな反響を呼びました。政治哲学という硬い内容の本にもかかわらず、著作「これからの『正義』の話をしよう」が大ベストセラーになるのと平行して、「社会的正義」や「公共(パブリック)」についての議論が論壇だけでなく、ネットを中心に一般市民の間にも広がった一年でもありました。さらに、昨年は「漏」(漏れる)の字が一年を表す漢字に相応しかったのではと思われるほど、ウィキリークスによる各国政府の機密情報の漏洩や、我が国の尖閣諸島中国漁船衝突事件のビデオ流出など、政府や公的機関における情報管理と公開のあり方が問われた一年でもありました。
今挙げた三つの事象は、まったく別個のものではありますが、私には相互に関連する、今後の社会や民主主義を考える上で非常に示唆に富んだもののように思われます。善し悪しは別として、それは一言で言えば、「情報化の進展が大きく人々の意識や行動様式を変え、さらには情報発信力を手にした人々の表現が大きなうねりとなって政治や社会を大きく変えつつある」ということです。その変化する方向は、あたかも国民が観客として政治を眺める「劇場型民主主義」であると、今のところでは思われますが、私はそこにとどまらず、国民一人一人が公共の担い手として議論の輪に参加し、公共的課題の解決を図る「自治型・討議型民主主義」に発展する可能性を持っていると考えています。
ご案内のように、今年は4月に統一地方選挙が行われます。一昨年の国政における政権交代の熱狂は、すでに過去のものとなり、今日我が国を覆っているのは、政治に対する絶望にも似た不信感と、正常に機能しない民主主義に対する苛立ちです。統一地方選挙は、民主主義の学校と言われる地方自治においてこそ、政治に対する信頼を取りもどし、民意を集約し、課題解決に向け適正に機能する質の高い民主主義を生み出すためのチャンスであると、私は考えております。今年一年、私は志を高くもち、「東村山から日本の民主主義を変える!」との気概をもって、「みんなで創る みんなの東村山」をさらに邁進してまいります。
ただ今申し上げましたように、私は市長就任以来「みんなで創る みんなの東村山」を掲げ、市民参加と市民恊働を推進してまいりました。そして、昨年4月に行いました、22年度当初の庁内放送において、私は「本年度は東村山市における『協働元年』である」ということを申し上げ、庁内組織にも「市民協働」を部署として位置づけるとともに、12月には当市で初めてとなる「市民討議会」を開催いたしました。無作為抽出で選ばれた90名の市民の方々が、その日に初めて顔を合わせたにも拘らず、地域や市政についてご自身の意見を述べ、他者の意見を聞き、お互い議論し、そしてグループとしての意見をまとめ、代表者が発表する姿を目の当たりして、「新しい公共」の空間が生成される、まさにその瞬間に立ち会ったような熱い感動を覚えました。そして私たち行政も、こうした市民の皆さまの力をきちんと受け止め、生かしていくだけの力量を持たなければ、この街は良くならないと痛感した次第です。
加えて、「市民討議会」では私達行政の「情報発信力」の低さを目の当たりにし、反省することとなりました。行政が発する情報が、市民の皆さまにはあまり届いていないことに、私はショックを受けました。市報をよく読むという方は、参加者全体の3分の1程度、市ホームページを見たことがあるという方は、それよりも少なく、財政白書の存在を知っていた方については、わずか3人だけでした。また、市民の皆さまの意見を聴くための公聴制度として「市長への手紙」「市長との対話集会」を行っていることをご存知の方も、少数でした。受け手側にも問題がない訳ではありませんが、私を含め、市役所はもっと発信力を高めなければならないと、強く感じたところです。
様々な情報が溢れる情報化時代だからこそ、私たちは多くの市民の皆さまに情報を正しく、かつ迅速に伝えるとともに、ニーズやご意見を的確に受信し、それらを政策の「どこに」「どのように」反映したかを、「見える化」することが求められています。市報と市ホームページに掲載すれば終わりなのではなく、「情報は伝わってなんぼ」であります。職員の皆さんには、本年は原点に立ち返り、どうすれば1人でも多くの方々が市報を手に取り目を通していただけるのか、市ホームページにアクセスしていただけるのか、自分たちが手がけたイベントやまちづくり活動にご参加いただけるのかを考えた上で、一年間のテーマとして、一人一人の「思い」を込めた情報発信、「思い」が伝わる情報発信に、ぜひ取組んでいただきたいと思います。その意味で、本年は「協働元年」に加え「発信力向上元年」であります。発信力向上が、東村山市における「自治型・討議型民主主義」の地平を開く第一歩となるよう、共に頑張りましょう!
さて、本年4月より新たな総合計画、行財政改革がスタートすることは、何度も申し上げてまいりました。新たな総合計画と行財政改革がスタートするということは、いわば「まちのバージョンアップ」「自治体経営のバージョンアップ」を図るということです。先ほど申し上げた
ように、この間、市民の皆さま、職員の皆さんのご理解とご協力によりまして、多摩26市で一番になる分野も出てくるなど、着実に成果が現れてきております。慢心や油断は禁物ですが、「私たちはやればできる」ということに誇りを持ちましょう。その上で、職員の皆さんにはぜひ自分の仕事を見直し、これまでの取り組みをさらに進化させ、新たな総合計画と行財政改革に即して、より効率的・効果的に成果を上げられるよう、「仕事のバージョンアップ」そして「ご自身のパワーアップ」を図っていただきたいと思います。
特に、本年3月と24年3月の2カ年で、90名を超える職員が定年を迎え、管理職やベテラン職員の皆さんが一挙に退職されます。大量退職による影響を最小限にとどめるよう、私も細心の注意を払い、これからの人事に臨む所存です。この大量退職という、いわば「人材危機」を乗り越えるためには、職員の皆さん一人一人のパワーアップが必要不可欠です。その意味でも、本年が「仕事のバージョンアップ元年」「人材のパワーアップ元年」となるよう、くれぐれも宜しくお願い致します。
私たちを取り巻く環境は、引き続き大変厳しいものがありますが、これまでの血の滲むような努力と、そこから生み出された成果を踏まえつつ、今後は「日本一の生活充実都市をつくる!」「東村山市から日本の民主主義を変える!」との気概と決意をもち、共に頑張っていこうではありませんか!私も政治家として、また自治体経営者としてさらなる研鑽を積み、自身のバージョンアップを図るとともに、「みんなで創る みんなの東村山」を基本理念として、市民の皆さまが安心と希望を持って暮らせる「笑顔あふれる東村山」の実現に向け、渾身の努力をしていく決意です。どうか市民の皆さま、職員の皆さんのご理解とご協力をお願い申し上げます。
最後になりましたが、皆さまにとりまして本年が実り多き年となりますよう、ご健勝とご多幸をお祈り申し上げまして、年頭のご挨拶と致します。
ご静聴ありがとうございました。
平成23年1月4日 渡部 尚